家庭内再生医療 (ジャコ)の巻

ヨメはんが肩の骨を折った。バアさんだから思いと動きが合わなくなって、つまらんところで転ぶ。なんでもクローゼットの扉に寄りかかったら、勝手に開いて自分もつられてドテンとなったとのこと。外科へ連れてゆくとここが折てます。とレントゲン写真。見れば折れて元から離れた骨の破片が宙に浮いて見える。エエッ、これってどうなるんだろう。コルセットでひと月ばかり(着替え・洗髪・風呂・・いやはや大変だった)。診察日に再度レントゲンを撮れば、なんと折れてなくなった骨の周辺に
うっすら骨が再生・生えかかっているではないか。元から離れた破片はどこへ行っtた?
83歳の婆さんでも「再生!」だって。お~! さあヨメはん。喜んだ。骨はカルシウムだ。補給せねばならん。まずチリメンジャコを買って参れ。とのご下命。それを白いゴハンの上一面にパァッ~とふりかけ、大口開けてパクパク。さらに、それでは足りぬ。「ごまめ」もだ。との追加。あれは正月のものだぞ。今時あるのかよ。とスーパーの海産物コーナーへ行くと、上から下まで全部
「煮干し」ばかり。食べられる小魚とかもある。
        やむなく程々のものを買って帰ると、ご機嫌斜めだ。これは「ごまめ」ではない。魚が大きい。頭取って、ワタも取って処理しろというのか!とのこと。数日後、再度スーパーの海産物コーナーへ。目を皿にして上から最下段まで眺めてみると、なんとちっちゃな袋に「ごまめ」とひらがなで表示し、その上に(田作り)と書いたパックがあった。お~これのことこか。結構高いなぁ~。 嫁はん。フライパンで炒ってタッパーに取り、脇に抱え込んで食べること。食べること。アラレとかピーナッツをパリパリする光景と全く同じ。これぞ再生医療の家庭版だ。微笑ましいというべきか、涙ぐましいと・・・・アホらしいとまでは・・・。 それからスーパーへ行くたびに一袋、二袋と仕入れるのが習慣になってしばらく。リハビリも進んで気持ちのゆとりができてくると「カルシウム渇望」が薄らぐ。気がつくと冷蔵庫の奥の方に「ごまめタッパー」が鎮座しているではないか。「オイ、ジャッコ・・・」と注意を喚起すると、やっとポリポリ。もうあの熱気はない。手伝いに来てくれている娘にこの話をしたら「それって、だしジャコのことぉ?」あ~もう「田作り」ってなんのことか分からんのだろう。 そうか、どれもイワシを煮て干したものだが、その大きさと加工程度。日本の水産・特に農業に深く根ざして呼び方が違う。綿花の栽培には不可欠な肥料だと聞いたこともある。今時綿って栽培してないだろうな。京料理での出汁の取り方って超うるさい段取りがあるようだ。手順違わず粛々とつくられた吸い物って奥深い味わいだろう。値も高い。これが煮干しの出世頭というべきか。ヨメはんのポリポリのために生まれ、生涯を閉じたイワシの冥福も祈ろう。肩の骨再生に貢献?したヤツもいるんだ。以って瞑すべし。ウ~ン死語だな。