デザイナーのひとり言
長年グラフィックデザイナーをやっているけど、いつまでに、誰が、最終デザインを
承認し、ゴーサインを出すのか。これがもう悩みのタネ。「これで行きましょう」と
一方的に押せば済むこともあるけど、〇〇会とか、△△△協会とか、幹事の人が「みんな
で案を検討します」と言われると、ちょっとうっとうしくなります。
「色がキツイ」「文字が大きすぎる。品がない」「小さくて読めない」とか。「曜日が
Sunってイヤ、(日)にして、お年寄りもいるのよ」そこで、ご意見を尊重しつつ改訂版を
作ります。
一番困るのは基本デザインが崩れる時。催物の追加や扱い方や比率の変更、「こっちを
メインにしてください」と言われると、先に言っといてよ。とイヤミのひとつも言いたく
なります。(幹事さんの責任じゃない変更もありますけど)
デザイン料をもらう、もらわないはともかく、引き受けた以上、お客様ご要望は聞かねば。
何はともあれ、ご満足していただかなければなりません。これぞ原則。前提条件。
2020東京オリンピックロゴマークの顛末はみなさまご記憶に新しいでしょう。当初、
これで行きす。決定しました。と発表されたのが「左端」のデザイン。
その後「日の丸は上にあるものだ」と偉い人が言ったとか。やむなく変更(中)再度、
修正して発表されたのが(右)。もうヤケクソ丸出しのロゴマーク。そこで、どこかの
マークのパクリだとかマスコミが騒いで、全てキャンセルに。
再スタートして発表されたのが市松模様の平凡で面白くもおかしくもないデザイン。
当初のバンと肩を怒らせた(パワーのある)デザイン性は消滅。無残!(これが日本の
組織の典型だ。どちらを向いても船頭さんばかり。決まるのは最大公約数。誰かこの顛末の
責任を取ったのだろうか。切られたシッポは最初のデザイナーだけ?)
デザイナーの端くれの私ですが、これは悲しい顛末でした。国家レベルでこうだからなぁ〜。
です。
宇治市民文化芸術祭ポスターは何度か制作依頼を
受けています。今までは観光都市・宇治市の風景
をベースにした古典的なイメージでした。
今年は機能重視だ。現代風で行きましょうか。幹
事さんと示し合わせて提案したのがこれ。
二日に渡ってある行事。一日だけの行事。ひと目
でわかることを主眼にデザインしたものです。行
事規模によって表現サイズも考慮。ちょっと息抜
きに円弧に添わせた注意書き。これは小さくて
いいと聞いた行事はそこそこの大きさの扱いに。
でした。
市役所の監督部門とか、いろんな人から意見が出
たのでしょう。幹事さんからの要望事項は以下の
通り:
*参加人数の多少に関係なく、エントリー部門の
扱いサイズは同じにしてほしい。いち日開催部門
と同時開催行事とは、同じ扱いで小さく。
*曜日は(sun) でなく(日)にする。
*もっと目立つ色を使ってほしい。
*円弧を描いた文字はやめて、普通の文字列にして
ほしい。など。
再調整する時間も無かったこともあり、要望事項
を取入れて再提案:結局これで印刷に回しました。
(初めの案の方がよかったのにぃ〜:デザイナーの
ツブヤキですけど)
提案されたデザインに意見がつくのは当たり前の
こと。たとえ納期が迫っていても、それを織り込
んで関係者による調整。「デザインすり合わせ会
議」って必要でしょうね。
そこでデザイナーが皆さんの意見を聞きながら、
じゃこうしましょうか。「これはどうでしょう」とか。当初のデザイン性を損なわない
対案が提示できそう。
「日の丸は上にあるものだ」唸りますね。難しい。デザイナーはTとoでTokyoを表した
かったのでしょう。「o」が日の丸なのがいけない。と言われれば抗弁できない。
でも偉い人の発言がなかったら、そのまま正式ロゴマークになっていただろう。みなさま
どう思われます?
歳をとったけど、未体験ゾーンってあります。ジジイだけど無い知恵を絞らねばならない
ことってあるなぁ〜。です。 いやいや、知恵だけで通過できないこともあるなぁ〜。です。
日の丸は上にあるべきだと言われて変更。
どこかのロゴマークのパクリだと騒がれ全てキャンセル
提案したデザイン
意見を聞いて修正したデザイン